鉄道高架と国道に挟まれ街区が周囲の高層ビルの谷間に忘れられたように残されていました。細い街路に面する土地は高層化が難しく、国道に面する土地は不正形な上狭小なために有効な活用が図られていませんでした。それらの土地を集約し小さな再開発を行うことで有効利用が図られました。
変形した敷地は建築に独自性の高い形態を与え特異な存在になっています。豊かな表情とともに分節化されたファサードは圧迫感を軽減し周辺環境への影響を和らげています。騒音に関しては新たに防音仕様が考案され外部の騒音を制御しています。併せて内部の遮音性能を向上させることで騒音対策にも繋がり静謐な暮らしを保証しています。遮音性能を高めたことで24時間楽器の演奏も可能となり、より自由で多様なライフスタイルを実現する事ができます。
エントランスには音楽愛好家を念頭に楽譜がデザイン化されており、アラベスクの旋律が柔らかく迎えてくれることに気が付くと思います。プライバシーもより高く守られアメニティに富んだ建築であり、建築計画上の悪条件を克服することで新たな付加価値を生み出した共同住宅の計画です。黒と白いコンクリート打ち放しの構成は蒲田の映画文化に対するオマージュです。